メトロコマース事件
【概要】
駅売店の契約社員が正社員との間に不合理な待遇の格差があるとして損害賠償を求めた事件
【判決】
「本給」、「資格手当」、「賞与」、「退職金」、「褒賞金」に関しては、待遇格差ではなく、不合理でない。
(理に適っている。)
ただし、「住宅手当」、「残業手当割増率の差」に関しては、不合理であると判断
【POINT】
退職金に関する判断
「使用者における退職金の性質やこれを支給することとされた目的を踏まえ、所定の諸条件を考慮することにより、労働条件の相違が不合理と評価することができるか否かを検討すべき」とし、今回のケースは、不合理でないと判断。
退職金 |
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性質 |
目的 |
職務遂行能力や責任の程度等を踏まえ ➀労務の対価の後払い ②功労報償的な性質 (長期勤務に対する労い) |
退職金支給の目的 ➀人材の確保 ②人材の定着 |
大阪医科大学事件
【概要】
有期雇用であるアルバイト職員が、賞与等について、正社員との間に不合理な待遇の格差があるとして損害賠償を求めた事件。
【判決】
賞与、福利厚生としての病気休職中の賃金に関して、正社員との待遇の格差を付けることは、不合理でないと判断。(理に適っている。)
【POINT】
・賞与についても:合理的な説明が必要。
運送会社の定年再雇用されたドライバーが、正社員との間に、不合理な待遇差があるとして争った事件。
日本郵便事件
【概要】
郵便配達の契約社員が、正社員との不合理な待遇格差を争った事件。
【判決】
「扶養手当」「年末年始勤務手当」「祝日休」「夏期、冬期休暇」「私傷病休暇」に関して、
待遇の差を不合理と判断。(差を付けることは違法)
【POINT】
・個々の労働条件での判断が必要。
ハマキュウレックス事件
【概要)
運送会社のドライバーの有期契約社員が、正社員との不合理な待遇格差があるものとして争って事件。
【判決】
無事故手当、作業手当、食事手当、皆勤手当、通勤手当は、不合理と判断。
住宅手当に関しては、不合理でないと判断。
長澤運輸事件
【概要】
運送会社の定年再雇用されたドライバーが、正社員との間に、不合理な待遇差があるとして争った事件。
【判決】
「精勤手当」と「時間外手当(超過勤務手当)」に関して待遇差を付けることは、不合理と判断。
まとめ
■労働契約法20条(不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。 |
・働き方改革関連法(2018年7月公布)により、労働契約法第20条は、パートタイム・有期雇用労働法第8条に統合。
上記改正部分の施行日は、2020年4月1日(中小企業の適用は2021年4月1日)
改正前の労働契約法では、「労働条件」という漠然とした表現でしたが、パートタイム・有期雇用労働法に移行したことに伴い、「基本給、賞与その他の待遇」という踏み込んだ表現になっています。
■通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止
(法9条)
事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。 |
・職務内容(業務内容、責任の度合い等)
・職務内容及び配置の変更
⇒同一であれば同一の待遇