P5 社会保障と労働施策の役割とこれから
|
(1)日本の社会保障制度の始まり (現在の社会保障制度は日本国憲法の生存権の規定を受け、国民の健やかで安心できる生活を保障している) 日本の社会保障制度は、明治時代以降、段階的に発展してきたが(注1)、現在の社会保障制度の根拠となっているのは、第2次世界大戦後の1947(昭和22)年に施行された日本国憲法である。 第25条において、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(第1項)」、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない(第2項)」とされ、いわゆる「生存権」 が規定されている。 また、これを受け、1949(昭和24)年に設置された社会保障制度審議会において、1950(昭和25)年に出された「社会保障制度に関する勧告」では、社会保障制度につい て、次のように書かれている。 社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、障害、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、 公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいうのである。 つまり、社会保障とは、国民が様々な理由により、生活の安定が損なわれたときに、社会保険などの社会全体で支え合う仕組みなどにより、公的責任において、国民の健やかで安心できる生活を保障することを目的としたものといえるだろう。 日々の「安心」の確 保や生活の「安定」を図るための制度であり、一生を通じて私たちの生活を支える役割を担っている。
注1 明治以降の急速な工業化に伴い、都市部への人口集中や労働環境の悪化が進み、貧困や労働災害が深刻化した。 政府は軍人や官吏を対象とした恩給制度を整備し、1911(明治44)年には「工場法」を制定して労働者保護を図った。大正時代には、労働運動の高まりを背景に、1922(大正11)年に「健康保険法」が制定され、工場労働者を対象にした医療保険制度が導入された。1938(昭和13)年に は「国民健康保険法」が成立し、農村部の住民にも医療保険が拡大した。 さらに、1941(昭和16)年には「労働者年金保険法」(1944 (昭和19)年に「厚生年金保険法」に改称)が制定され、企業労働者向けの年金制度が始まった。 |
